パン屋のカフェで鼻を赤くする

子供の習い事に付き合い、自転車で隣町へ。


いつもは待ち時間に古本屋巡りや買い物をするのだが、北風の強さに負けてお茶を飲むことにする。
本を持ってこなかったので、駅から一番近い古本屋で文庫を一冊。

絵描きの植田さん (新潮文庫)

絵描きの植田さん (新潮文庫)

以前ポプラ社から出たものが文庫になっていて、待ち時間に読むのに丁度良い厚さだなと購入。



パン屋に併設されたカフェは最近リニューアルして綺麗だし、禁煙なので隣のコーヒーショップよりも気に入っている。


パンとカフェオレをお盆に載せてカウンター席へ。


「絵描きの植田さん」は悲しい事故から話がはじまる。
恋人と聴覚を失った植田さんは高原の一軒家に引っ越す。
静かな、雪の白い世界で淡々と過ぎていく植田さんの生活。


そこに「向こう側」の街から母と娘が越して来る。
明るい娘メリは植田さんの心を溶かし、読み進む私の頭の中もモノトーンから少しずつ色が付いていく。


そして事件が起こり…



後半にイラストレーターの植田真さんの絵が20頁ほどある。

「うえださんの絵には、ひとがひとりもでてこないのね」
とメリが物語の途中で言うのだが、これらの絵の中には少女達の可愛らしい姿。
落ち着いた色使いの絵が、大団円に向かっていくストーリーを静かに盛り上げてくれている。



最後まで読み終わり、泣きそうになった。
泣いてしまうと誰か知り合いに会った時に恥ずかしいので、
バタバタと席を立って子供の所に向う。



冬の終わりに丁度良い素敵なお話しでした。