お正月の思い出

小学生の頃、一月二日は父の恩師の家に年始の挨拶にうかがうのが恒例だった。
母は着物を着ていて、私と妹はお揃いの母の手作りの服を着せられていた。
先生のお宅は東京郊外の丘の上にあり、バスを降りると風の冷たさを感じた。



ママさんと呼ばれる奥様に出迎えられ、母と私達は暖かな和室に通される。
父は同じ和室に通される事もあったが、先生のアトリエに酒席がある時はそちらに行った。
先生はご高齢で、火鉢の横の座椅子に座る姿を憶えている。


ママさんはゆったりとした着物の着方をしていて、話す言葉は明るく歯切れが良く、昔の東京の粋な女性だった。
そんなママさんに二言三言話しかけられる以外は、大人達の世間話を黙ってじっと聞いているだけだった。
お膳の上の料理はお芋と筍の炊き合わせと数の子の麹漬けが毎年あったが、遠慮をしてあまり食べなかった。



帰る頃になると、ママさんが簞笥の上から小箱を取り出し私と妹にお土産をくださる。
それは化粧品会社の友の会の景品で、子供には不似合いだったけれどお礼を言いおいとまをする。



外に出るとまた冷たい丘の風にあたったが、解放された安堵感で気持ちが良かった。




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田舎の無い我が家は正月も東京散歩

増上寺と東京タワー



世界貿易センタービルディング展望台から見たスカイツリー



そんなに高くない展望台ですが、浜松町駅を出入りするモノレールを見たり、東京タワーを見たりしてのんびりしました。



帰りに表参道のイルミネーション。この日が今年度最終日。